2022 年 78 巻 2 号 p. I_79-I_84
地球温暖化やヒートアイランド現象によってもたらされる健康へのリスクが懸念されている.健康リスクを適切に評価するためには,熱的快適性の観点から評価することが重要である.本研究は,熱的快適性指標の1つであるUniversal Thermal Climate Index(UTCI)を用いて1980年から2020年までの日本全国の熱的快適性の長期変化傾向と,UTCIと熱中症患者数の関係を評価した.UTCIの長期変化傾向に関して,140地点中109地点で上昇傾向が検出された.また,地球温暖化やヒートアイランド現象,都市化による気温・MRTの上昇と風速の減少は熱的快適性の悪化を助長させることを示した.UTCIと熱中症患者数の関係に関しては,熱中症患者数が急増するUTCIの閾値が都市ごとに異なることを明らかにした.