2022 年 78 巻 2 号 p. I_73-I_78
地球温暖化の進行により,我が国では北海道の一部地域を除く多くの豪雪地域で将来の降雪・積雪の減少が予測されている.融雪水が重要な水資源である地域での水資源管理が今後難しくなることが懸念される.こうした豪雪地域での将来の水資源管理への気候変動の影響を明らかにするため,本研究では,北陸地方に位置する手取川流域手取川ダムを対象に,気象研究所MRI-AGCM3.2SによるRCP8.5シナリオでのSSTマルチモデル平均を用いた150年間の連続気候実験(シングルラン)のデータを用いて,ダム貯水池の利水・発電運用の将来変化と影響の評価を行った.その結果,特に21世紀後半に,降雪・積雪・融雪過程や夏季以降の流況の変化が大きくなり,夏季のダム貯水量の低下や4~5月の水力発電量の低下,年間発電量がかなり小さくなる頻度の増加といった変化が生じ得ることが,一可能性として示された.