2022 年 78 巻 2 号 p. I_949-I_954
洪水時,流量が最大となる時ではなく流量が減少する過程で側岸侵食が発生する現象が観察されている.本研究では,側岸侵食の原因が砂州の発達によるものと考え,流量がゆっくりと変化する状況下における砂州の弱非定常安定解析を行った.流量の変化する速度が河床変動の生じる速度に比べて十分に小さいと仮定し,河床変化を表す𝑡と流量変化を表す𝑇の二つの時間を導入する.それら二つの時間スケールの比を微小パラメータとする多重尺度展開を用いた弱非定常安定解析を行い,流量が増加する場合と減少する場合の擾乱の発達速度を求めた.解析の結果,擾乱に対する河床の不安定性が最大になるのは流量がピークよりも小さい時であり,しかも流量が増加する場合よりも減少する場合の方が河床の不安定性は増大することが明らかとなった.