大正末期に開始された用排水幹線の改良に対する農林省の府県への助成は,中小河川改修の場合にも実施されるようになり,内務省の河川管理権限との調整を必要とした.その後内務省の補助制度が成立するが,府県の側からすれば,いずれの補助費も荒廃する中小河川の水害減少に有効なものであった.愛知県内での当時の中小河川改修の経過を調べていくと,両省間での河川管理権限に関する調整の影響は小さく,計画手法の違い,流域・沿川の状況などから棲み分けが行われたことが確認される.この時期の同県には,双方の補助費を効果的に受け入れ,中小河川の改修を積極的に推進しようとする姿勢が見られる.