抄録
わが国の都市高速道路網は,都市圏の成長とともに拡充されてきたが,定期巡回や事故対応などの交通管理巡回は,現場の即応性と経験知が優先され,必ずしも科学的見地に立脚していない.交通管理巡回の効率的な実施は,交通需要が減少傾向にある高速道路会社の料金収入を確保する上でも極めて重要である.このため本研究では,都市高速道路の交通管理巡回に注目し,動的かつ不測の事案を扱う定期巡回,事故対応,および,車両配置等について,利害の異なる複数の主体の意志決定を考慮したマルチエージェントモデルを構築した.このモデルを用いて高速道路会社の公共性と採算性の観点から,望ましい方策について検討した結果,利便性向上に配慮しつつ,交通管理巡回の効率化につながる方策の存在が示唆された.