抄録
大地震等の自然災害では,サービスの供給停止に加え,消費者の需要減少によっても産業部門に被害が生じる.特に観光産業では,直接的な被害が比較的少ない地域においても需要が減少することもあり,需要減少の影響が大きいとされる産業である.このような需要減少の背景には,被災地におけるサービス水準に関する情報の不確実性や娯楽を回避する心理的要素など様々な要因が考えられるが,そもそもこうした需要減少の規模や実態自体が十分に把握されていない.そこで,本研究では,観光需要の減少の時間的継続性や影響範囲の空間的な拡がりを定量的に把握するための分析フレームを検討し,既往災害における観光入込客数の変化を対象に実証分析を行う.