社会政策
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日本の農林年金と農業協同組合
―人事労務管理の観点から―
福田 順
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2016 年 8 巻 1 号 p. 153-164

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抄録

 本稿では農林漁業団体職員共済組合(農林年金)が農協職員の人事労務管理に与えた役割について論じる。第二世界大戦後の農業協同組合は職員の高い離職率に苦しんでおり,その解消には老後の年金給付を充実させることが必要とされた。公的年金制度の分立を招くという周囲からの批判もあったものの,農協等の陳情活動や農協と強い関係を持つ農林省の後押しもあり,農林年金は設立された。本稿では以下のことが明らかになった。第1に,他産業に比較して農協職員の離職率は実際には低かった。第2に,農林年金が導入された時期は職員の賃金が低かったこともあり,農林年金の給付水準は低く,農協職員の離職率を抑制することができなかった。第3に,農林年金の保険料負担が増えたことで,若年女性の人員整理が増えた可能性があることが分かった。第4に,農林年金は1990年代以降の農協組織の再編の足かせとして,機能した可能性があったことが分かった。

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© 2016 社会政策学会
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