抄録
環境負荷が少なく,かつ活力ある都市空間を実現するためには,自動車に過度に依存しない交通システムの構築が必要であり,歩行者交通施策の重要性は今後ますます高まると考えられる.安全・快適な歩行者交通システムには,連続性のある歩行者空間整備が重要である.本研究は,歩行者の回遊性ポテンシャルから歩行者空間を評価するものであり,船場建築後退線を研究対象とする.大阪船場地区において指定されている船場建築後退線は,本来,歩行者空間を拡充するために導入されたものではないが,歩行者の回遊性向上に資するところが大きいと考えられる.そこで,本研究は,船場建築後退線によって生み出された空間の効果を地区における回遊性の視点から評価し,セットバック空間の有効活用について検討することを目的とする.