抄録
モータリゼーションの進展は,恩恵をもたらす一方で,行き過ぎると様々な問題を引き起こす.その進展状況が都市ごとに違う要因の1つとして,鉄道に代表される代替的な交通手段の整備水準の違いが挙げられる.本研究では,アジア途上国大都市における早期鉄道整備によるモータリゼーション進展抑制効果を定量的に把握することを目的とする.まず,鉄道整備時期の違いがモータリゼーション進展に与える影響を明らかにするため,日本の大都市のデータを用いて,都市密度低下と乗用車保有増加の相乗効果についてマクロモデルを構築する.モデルをアジア大都市へ適用し,早期鉄道整備,成熟期鉄道整備,鉄道整備なしの3つのシナリオを設け,2050年までの将来推計を行う.その結果,各都市における早期鉄道整備のモータリゼーション進展抑制効果が示される.