抄録
高齢化の進行に伴って,公共交通サービスの重要性は高くなると考えられる一方,公共交通は利用しづらいとの声は少なくない.公共交通の利用のしづらさには様々な要因があるが,高齢者にはほとんどの活動を自立的に実行できる人もいれば,他人の支援なしには活動が困難である人もいるため,個々人がどのような活動能力を有しているかによって利用しづらいと感じる要因は異なると考えられる.そこで本研究では,医学や老年学の蓄積に立脚しつつ,項目反応理論を用いて高齢者の活動能力を計量化するとともに,様々な阻害要因を取り上げ,活動能力と阻害要因の関係を明らかにする.以上の分析を踏まえ,高齢者の活動能力の高低によって,重大な阻害要因は異なることを実証的に示す.