抄録
日本の近代化を支えた伝統的な利水技術として代表される用水,疏水,水道といった水利環境は,国の重要な近代化遺産として保全される一方,その機能が失われることも少なくない.本研究では,既存の歴史的な水利環境を再生することで,歴史の保全と防災水利の確保を目指す.
ケーススタディとして,明治期に造られ現在は老朽化や漏水などが原因となり配水が止められている「本願寺水道」を対象とした.本願寺水道の再生に向けた技術的な検討を基に,各対象地区の消防システムの運用に必要とされる水量と比較することにより,消防水利としての活用可能性を明らかとした.このケーススタディの結果をもとに,歴史的な水利環境の再生と活用を検討するためのプロセスについて整理を行った.