抄録
本研究は,人口減少・高齢化が進展する社会において,将来人口の変化を捨象した静止的な人口構成を仮定して作成した計画案や公共事業の経済評価がもたらす政策的バイアスを分析する.その際,動学的資源配分モデルを用いて,人口構成の不変想定の下で作成される計画がもたらす社会経済状態と,人口構成の変化を考慮した社会的最適計画がもたらす社会経済状態を比較することにより,不変想定に基づく計画の政策的バイアスを分析した.その結果,人口減少を考慮しない計画の下では,過大な社会基盤投資が行われ,現在世代の厚生を犠牲に将来世代の厚生を増やすこと,高齢化の進行を考慮しない計画には政策バイアスが発生しないが,高齢化の進行を考慮した上で固定的な社会的割引率を用いると過小な社会基盤投資をもたらすことを明らかにする.