抄録
本稿では,離散-連続モデルの研究動向に関するレビューを行った.まず,研究の系譜を (1) ミクロ経済理論より演繹的に導出される構造型モデル,(2) 現象記述の自由度を高めることに主眼を置いた誘導型モデルに大別し,各特徴を整理した.その上で,(a) 経済理論への整合性を重視する場合にはキューンタッカー条件より導出される構造型モデルの適用が望ましいこと,(b) 現象記述や不完全観測下での行動モデルを構築する場合には誘導型モデルの方が現象記述の自由度が高いこと,(c) 両系譜の特徴を活かすことで,経済理論を踏まえつつ現象記述の自由度を高めた折衷型モデルの構築が可能であること等を明らかにした.最後に,交通行動分析分野における離散-連続モデルの適用事例を体系的に整理し,今後の研究の方向性についての展望をまとめた.