抄録
人々が,政府の基本政策に対して如何なる態度を示すかは,土木における諸政策を検討する上で重要な問題である.この認識の下,これまで「政府に対する批判」の原因を探る様々な研究が行われてきたが,これらが明らかにしてきた諸要因だけでは,政府に対する態度全般を完全に説明しているとは必ずしも言えないのが現状であり,政府に対する態度の要因を探る研究は未だ必要である.本研究では,政府や政府の政策方針に影響を及ぼす基礎的な変数の一つとして「人は皆,純粋なる利己主義者である」という信念,「利己主義人間観」が存在しているという議論に着目し,アンケート調査により,政府に対する否定的態度の形成に関する理論仮説を検証した.その結果「政府に対する批判」の背景に利己主義人間観が一つの要因として存在している可能性が示唆された.