土木学会論文集D3(土木計画学)
Online ISSN : 2185-6540
ISSN-L : 2185-6540
70 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
和文論文
  • 梶原 大督, 菊池 輝, 藤井 聡
    2014 年 70 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/01/20
    ジャーナル フリー
     人々が,政府の基本政策に対して如何なる態度を示すかは,土木における諸政策を検討する上で重要な問題である.この認識の下,これまで「政府に対する批判」の原因を探る様々な研究が行われてきたが,これらが明らかにしてきた諸要因だけでは,政府に対する態度全般を完全に説明しているとは必ずしも言えないのが現状であり,政府に対する態度の要因を探る研究は未だ必要である.本研究では,政府や政府の政策方針に影響を及ぼす基礎的な変数の一つとして「人は皆,純粋なる利己主義者である」という信念,「利己主義人間観」が存在しているという議論に着目し,アンケート調査により,政府に対する否定的態度の形成に関する理論仮説を検証した.その結果「政府に対する批判」の背景に利己主義人間観が一つの要因として存在している可能性が示唆された.
  • 屋井 鉄雄, 泊 尚志
    2014 年 70 巻 1 号 p. 9-27
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/01/20
    ジャーナル フリー
     我が国で公共事業等の構想段階を念頭に組み立てられた計画プロセスを議論の出発点として,改めてその特徴を考察するとともに,その考え方を参考に他の計画段階を含むより一般的なプロセスとして体系化することを目的とし,技術検討プロセス,計画検討プロセス,コミュニケーションプロセスという3つの並行するプロセスを提案した.そしてそのような並列的なプロセスが何故必要になるかを,市民参画の導入経緯との関係等で論じた上,妥当要求の考え方を応用しつつ,計画が社会で正当とみなされるために必要な条件を満たし,市民等から示される様々なクレームを適切に整理して対応するため,3つのプロセスによる計画策定の進行管理とリスク管理が必要になることを体系的に論じている.
  • 森崎 孔太, 塚井 誠人, 難波 雄二, 桑野 将司
    2014 年 70 巻 1 号 p. 28-43
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/01/20
    ジャーナル フリー
     住民参加の討議では,討議に不慣れな参加者間の認識の齟齬によるコミュニケーション上の対立を回避するため,司会者を立てることが多い.しかし,司会者の関与が参加者の討議評価に及ぼす影響は明らかではない.本研究では,司会者の討議関与が消極的な場合と積極的な場合について討議実験を行い,参加者の納得に及ぼす影響を明らかにする.討議内容に関しては,テキスト分析によって意見内容推移の特異性を定量的に把握した.また,討議結果への納得度をはじめとする討議評価は,実験後のアンケートによって収集した.その結果,参加者が自身の討議への貢献度が高いと感じている場合,司会者による積極的な関与によって参加者の納得度が高まる一方で,それが低いと感じている場合は,司会者による積極的な関与は慎重に行うべきことが,明らかとなった.
  • 山村 明義
    2014 年 70 巻 1 号 p. 44-55
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/01/20
    ジャーナル フリー
     近年,首都圏における,朝ラッシュ時の遅延は鉄道事業者にとって大きな課題となっている.特に,稠密運転路線においては,一旦小規模な障害により遅延が発生すると,後続列車に遅延を伝播させ,拡大する傾向にある.そこで,東京地下鉄では,列車運行実績データを活用することで,遅延状況の可視化を行うと共に,遅延規模の指標化(Static Index,Active Index),遅延発生要因の分析,対策の実行というアプローチを確立した.このアプローチを,遅延・混雑の激しかった東西線をモデルに実施し,ダイヤや駅オペレーションのソフト面の改善,信号設備・駅設備・車両設備のハード面の改善を行うことで,遅延短縮を図ることができた.
     本稿では,そのプロセスと遅延改善策について述べ,その改善効果を検証すると共に,首都圏稠密運転路線における遅延改善のあり方を考察する.
  • 高松 亨
    2014 年 70 巻 1 号 p. 56-75
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/01/20
    ジャーナル フリー
     本研究は,国土計画の評価に際してのジニ係数分解の適用可能性について考察するものである.研究では,国土計画での地域的な集中・分散の捉え方及び関連する評価方法の現状を整理した上で,集団全体の格差を表す指標であるジニ係数を集団の構成要素に分解し適切に分析することで,地域的な集中・分散の状況を計画の意図に即して評価できることを示している.
  • 原田 剛志, 倉内 文孝, 高木 朗義
    2014 年 70 巻 1 号 p. 76-87
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,ODペア間の接続性を確保するため,複数の非重複経路を考慮しながらも途絶の影響度を計量可能な接続脆弱性評価方法を提案する.非重複経路数を制約条件とする総所要時間最小化問題を解き,複数経路を考慮したアクセシビリティ指標によって道路網を評価し,一部区間の不通における評価指標の減少を分析することで道路網の弱点を特定する.岐阜県全域を対象とした道路ネットワークにて試算を行い,平常時の接続性評価と災害時を対象とした接続脆弱性評価を実施した結果,複数経路を考慮することで潜在的にネットワーク形状に問題を抱える地点を特定することができた.また,平常時に評価が高くとも,一部区間の不通によって大きな影響を受ける地点が発見され,接続性と接続脆弱性の2つを総合的に評価することの意義が確認できた.
  • 高木 良太, 円山 琢也, 溝上 章志
    2014 年 70 巻 1 号 p. 88-101
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/20
    ジャーナル フリー
     コードン課金・エリア課金は,代表的な次善混雑課金政策であり,その最適設計手法の開発は重要な研究課題である.しかし,既存の最適化手法は,計算中の領域の形状制約が困難なため,計算結果の出力値が非現実的な領域になることがある.また,既存手法は課金領域の中心位置を含めた最適化を想定しておらず,課金領域の中心を人為的に設定する必要がある.本研究は,課金領域の形状制約と中心位置の最適化が可能な新たな計算法を構築した.この計算法は,課金領域の表現とその最適化の過程において,計算幾何学の基礎的な手法を利用している.また,複数課金領域の最適化も実行できる特徴がある.最後に,この計算法を実都市ネットワークへ適用し,既存手法の結果との比較等から,提案手法の有用性を実証的に示した.
  • 榎本 甫, 桑野 将司, 小池 淳司
    2014 年 70 巻 1 号 p. 102-112
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
     東日本大震災時,ソーシャルメディアが活発に利用され注目を浴びた.なかでもTwitterは,従来のマスメディアでは扱いきれない情報が多くやり取りされ,被災者の情報支援に役立った.しかし一方で,Twitterで発信される情報の信頼性は必ずしも担保されていない.そのような状況下で,Twitterにおけるテキスト情報が人々の行動にどう影響しているかは明らかではない.本研究では,ソーシャルメディア情報を用いて災害時の避難行動を誘導する新たな施策立案に資する情報を提供するという立場から,両者の間の関連性を定量的に把握することを目的とする.東日本大震災時の東京都内で発信されたTwitterのテキスト情報と人口流動メッシュデータを用いた分析の結果,両者には相関関係があることを明らかにした.
  • 高山 雄貴, 赤松 隆, 小坂 直裕
    2014 年 70 巻 1 号 p. 113-130
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
     集積経済を扱った従来の立地理論(e.g., New Economic Geography: NEG)では,スケールの異なる空間単位(e.g., 東北ブロック~宮城県域~仙台都市圏)における経済活動の相互作用が明示的に考慮されていない.本研究では,その相互作用を明示的に導入した階層的(マルチスケール)空間構造を持つCore-Peripheryモデルを構築する.その均衡解の分岐現象をAkamatsu et al. 1), 2)と同様の手法で解析した結果,地域間・地域内交易費用の組合せに応じて,非常に多様な集積・分散パターンが生じうることが明らかにされる.なかでも,地域内競争の存在によって地域間での再分散現象が起きるという発見は,空間スケール構造を軽視してきた従来のNEG理論に対する再考を促している.
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