2014 年 70 巻 4 号 p. 227-244
建設プロジェクト契約には多くの不確実性やリスクが介在する.イスラム法を意味するシャリーアは,不確実性に関わるガラールやマイスィルを禁止する.したがって,プロジェクトに関わる契約は,契約内容によってシャリーアに抵触する危険性を含む.シャリーアに準拠したプロジェクト契約を遂行する場合,契約マネジメントにおける不確実性への対処方法のシャリーア適合性が重要な課題となる.現在のところ,イスラームにおけるシャリーア適合性に関して厳密な定義や普遍的な法解釈が存在するわけではない.また,地域によって適合性の解釈に多大な多様性が介在する.本研究では,プロジェクトに関わる完備契約を対象として,契約のシャリーア適合性を判定する理論モデルを提案し,典型的な契約スキームのシャリーア適合性について考察する.