抄録
近年,新経済地理学(NEG)理論を応用した空間応用一般均衡(SCGE)モデルが数多く開発されている.この枠組みは集積の経済を考慮しているという興味深い特徴を持つ一方で,均衡状態の安定性を確認していないなど,いくつかの過度な単純化・NEG理論との不整合が見られる.そこで,本研究では,NEG理論と整合的なSCGEモデルを開発する.このSCGEモデルは,従来研究の課題を解決する,以下の2つの特徴をもつ: 1) Venables1)の枠組みと同様の産業連関構造を考慮することで理論的な整合性を確保している,2) 政策実施により創発する安定均衡状態を得ることができる.さらに,日本を対象とした適用計算を実施することで,提案した手法が実経済を対象とした場合でも計算可能であることを示す.