2016 年 148 巻 2 号 p. 64-68
光遺伝学は,開発当初から,主に脳神経細胞に適用されてきた.しかし,光遺伝学のアイディア自体は,どんな細胞の光制御にも応用可能である.多種の細胞が形作るネットワークを,何らかの信号が行き交うことで,多細胞生物である我々は,ひとつの個体として,整合性のある活動を行っている.本稿では,脳内グリア細胞に光遺伝学を適用した例を紹介する.また,光遺伝学は,細胞内pH操作のツールとしても活用できる.私たちの研究を通して,細胞内pH変動から始まるシグナル・カスケードの重要性が明らかになってきた.本稿の後半では,脳内において,細胞内pHが変動する要因,また,pH変動が及ぼす効果について,これまでの先行研究をまとめて総説する.