抄録
近年,日本の自然災害対策の分野では,被災後の都市の再構築能力に関連して「レジリエンス」という用語が頻繁に使われている.自然災害対策におけるレジリエンスの概念は,自然災害に対する脆弱性評価の研究,生態システム,社会生態システムの分野におけるレジリエンスの研究に影響を受けながら発展してきた概念である.本研究では,これらの概念について国内外の文献のレビューを行い,その発展の経緯と多様な定義の整理を行った.都市システムのレジリエンスの概念は,(i)システムの安定性としてのレジリエンスの概念,(ii)システムの適応的再構築能力としてのレジリエンスの概念に分類された.この整理をもとに,今後,自然災害に対する都市システムのレジリエンスの概念的枠組みを構築する上での方向性を提示した.