抄録
商業店舗の立地パターンを消費者行動と企業行動の相互作用によって説明づけるモデルとして,Harris & Wilson (1978)が挙げられる.しかし,モデルに集積の経済が存在することに起因する非凸性が障壁となり,このモデルの解析的性質は2ゾーン等の非常に限定的なケースを除き調べられてこなかった.本研究では,赤松ら(2010)の分岐解析手法を援用し,多数のゾーンが存在するもとでのHarris & Wilsonモデルの挙動を分析する.その結果として,新経済地理学モデルで観察される“空間周期倍分岐カスケード”現象が,Harris & Wilsonモデルにおいても生ずることを明らかにする.更に,Harris & Wilsonモデルと既存の様々な立地モデルとの関係も体系的に整理する.