抄録
発生頻度は小さいが規模は大きい津波に対し,わが国では避難を中心とした対策を講じることになっている.避難の計画に有用なのが避難シミュレーションであるが,その際に,津波避難開始時間の適切なモデル化が必要である.そこで本研究は,地震時の津波避難行動を再現するような津波避難開始時間の数理モデルについて検討した.その結果,避難開始理由によって避難者を3群に分類し,各群の避難開始時間の数理モデルを与え重ね合わせることにより,2011年東北地方太平洋沖地震時の避難開始時間の累積分布曲線を提案した.また,岩手県釜石市及び宮城県仙台市を対象に各群の構成比を変化させて適用し,構成比以外のパラメータ設定手法についてはより詳細な検討が必要であるものの,両市の同地震時の避難開始時間の累積分布曲線をある程度再現できた.