抄録
19世紀のドイツ駅舎は,大都市の頭端駅においては,フランスの駅舎の配置計画が,正面配置やU型配置を黎明期に採用したのとは対照的に,初期の頃から乗降を線路の側面に分離する両側面型を多用した.さらに,フランスとは違い初期の頃から,ホームへのアクセスが認められ,過渡期のL型配置がフランスより早い1860年代から現れ始め,1880年代には乗降動線を正面本屋付近に集中させる正面配置を多用するようになる.また,フランスの多くが頭端駅を採用したのとは対照的に,1880年代には中央駅にも通過駅を採用し,その多くは高架駅,時には,中央部に頭端駅を持つ,ハイブリッドタイプも計画した.本研究では,フランスと比較しながら,ドイツ駅舎平面配置の巧みな動線処理と多様性について分析し,その歴史的変遷を明らかにする.