抄録
本研究では,自然災害と国の経済成長の関係性に関する実証分析を行った.具体的には,自然災害統計EM-DATとマクロ経済データWDIの各国統計情報を統合した国別パネルデータを用いて,自然災害の生起又はその規模が各国の経済全体あるいは産業部門別の経済成長に及ぼす影響を把握するための計量経済モデルを構築した.システム一般化積率法を用いたパラメータ推定の結果,自然災害はGDPに対して統計的に有意ではないものの概ね弱い正の影響があること,産業部門によって自然災害がその成長にもたらす影響の方向が有意に異なることなどが確認された.また,既存の理論研究より示唆される自然災害の生産性効果と本研究の推定結果とが矛盾していないことも確認された.