2016 年 72 巻 5 号 p. I_607-I_616
時間帯別ボトルネック通行権取引制度は一般ネットワークにおいて社会的費用最小化の観点から最も効率的な状態を達成できる.しかし,料金抵抗の大きい利用者は希望時刻の通行権が高価格の場合に買うことができず,渋滞による待ち時間はなくなったとしても,結果的に厚生が低下することが懸念される.本研究では,スケジュール制約と料金抵抗が利用者ごとに異なる場合に,通行権取引制度が利用者のパレート改善に及ぼす影響を分析した.その結果,ボトルネック容量全てに対して通行権取引制度を導入した場合にはパレート改善が必ずしも達成されないのに対して,通行権取引制度をボトルネック容量の一部のみに導入する場合には料金抵抗の小さな利用者のみが通行権を買っていれば均衡状態でパレート改善が達成されることがわかった.