抄録
近年公共交通におけるICカードの普及によって柔軟な運賃設定が可能になり,多くの公共交通で多様な運賃制度が導入されている.運賃制度の違いにより,公共交通事業者の歳入だけでなく乗客行動にも影響すると考えられる.一方,ICカードの利用者数の増加により,ICカードの利用履歴データが公共交通の分析手段として注目を集めている.
そこで本研究では英国・ロンドンで導入されているOyster Cardの4週間分の利用履歴データを用いて,運賃制度のうち特にPrice Capに着目して,運賃制度と乗客行動の関係性を分析した.トリップ単位で移動時間と滞在時間の比較を行った結果,Price Cap該当者の移動時間は有意に長く,滞在時間は有意に短いことを確認した.さらに,Price Capが活動パターンに及ぼす影響を分析したところ,Price Capは行動パターンの多様化に寄与することも確認した.