2017 年 73 巻 5 号 p. I_147-I_161
本稿では,交通施設の損壊という短期的な被害を入力条件としてシナリオ下における地域間所要時間の変化を算出する交通モデルと,地域間所要時間の変化に反応して経済被害額を算出する経済モデルの2種類のサブモデルを組み合わせることにより,短期的経済被害計測モデルを構築した.中京都市圏を対象に南海トラフ地震を想定した事例分析を行った結果,インフラ施設の損壊により産業別・地域別それぞれにおいて中間財や労働供給量の減少といった複合的な被災要因によって被害が生じることが示唆された.また,復旧シミュレーション分析および在庫を考慮した経済影響分析から,効率的な復興のためには復旧タイミング・地域特性・被災要因といった複数の要素を勘案した包括的な対策が講じられるべきである,という結論を得た.