抄録
地域資産である広場や商店街などの物理的特性が変わると,そこで行われる祭りなどの地域の共同行事の参加者の数や多様性も変わりうる.そして,それに伴い行事で新たな共同が生まれ,それを機に日常生活の交流も拡大することがある.これは地域資産の特性がもたらす価値と考えることができる.
本稿は,既存のネットワーク形成モデルが地域資産の上記の機能を評価するには不十分であることを示した上で,筆者らが提案する,共同行事における交流と日常生活の交流を別の階層で表す階層型の社会ネットワーク形成モデルを紹介する.そして,地域資産の物理的特性の機能を定量的に評価できる可能性や本手法の課題を示す.以上を通じ,本稿は,社会ネットワークの形成過程に着目した地域資産の機能評価に関する方法論を開発していくための一つの方向性を示す.