2018 年 74 巻 3 号 p. 203-216
経済活動の空間的集積現象には,様々な空間スケールの下で産業立地の集積が形成されるという規則性が頑健に成立している.本研究は,各空間スケールにおける交通整備が産業集積に及ぼす影響を分析するため,二つの階層の空間構造を持ち,産業連関構造を明示的に考慮した空間経済モデルを構築した.それぞれの空間階層における交通整備を想定した数値実験を通じて,人口集積パターンの空間的特徴に関しては,既存研究の知見と概ね整合的な,交通整備によって一極集中から分散的な均衡が生じる特性が確認された.産業集積に関しては,地域間スケールにおいても地域内スケールにおいても大規模な地域・都市のみに財部門の集積が生じること,小規模な都市においてもサービス部門が維持されやすいこと,など新たな知見が見られた.