土木学会論文集D3(土木計画学)
Online ISSN : 2185-6540
ISSN-L : 2185-6540
74 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
和文論文
  • 大島 大輔, 大口 敬
    2018 年 74 巻 3 号 p. 165-182
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/20
    ジャーナル フリー
     単一格子ネットワーク上のボトルネックに起因する渋滞が一周つながり,グリッドロック現象によってネットワークの交通量が低下している時に,道路インフラ側の制御によりグリッドロック現象から脱却し,低下した交通量を回復する方法を示す.ここで道路インフラ側の制御とは,筆者らが既往研究で明らかにしたグリッドロック現象の発生条件式を満たさないよう,単一格子ネットワーク上の交差点で,単一格子ネットワークを構成するリンク側の合流比が増大するよう調整するものである.また,単一格子ネットワーク上の4箇所の交差点のうち制御対象交差点の選択方法を,制御導入後に十分時間が経過し交通状態が安定した時のネットワークの総スループット最大化(長期戦略)と,制御導入直後の導入前に対する総スループットの増分最大化(短期戦略)で示す.
  • 髙野 裕作, 佐々木 葉
    2018 年 74 巻 3 号 p. 183-192
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/20
    ジャーナル フリー
     現在の都市空間を構成する街路は,近代化以前から存在する道筋や都市計画によって建設された街路,スプロールによって自然発生的に形成された街路など様々な形成時期,経緯によるものがある.またそれらは幹線道路や近隣商店街,住宅街の区画街路など多様な利用特性を有しており,これらの関係性を明らかにすることは今後の街路整備,都市計画を検討するうえで,有用であると考えられる.
     本研究では東京の都市拡大によって市街地が形成された目黒区・渋谷区を中心とした地域を対象として,旧版地形図の分析より個々の街路の形成年代を,Space Syntax理論を用いて経路としての利用特性(媒介中心性:Choice)を分析し,これらの関係を相関比を用いて明らかにした結果,形成年代の古い街路が主に近隣スケールにおいて媒介中心性が高いことが明らかとなった.
  • 金野 貴紘, 荒井 勇輝, 屋井 鉄雄
    2018 年 74 巻 3 号 p. 193-202
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/20
    ジャーナル フリー
     東南アジアには特有の交通モードであるLAMATが存在する.これらは現地住民の足として根付いているが既定の路線や停留所を持たず,また現地政府による登録や管理も不十分であることからその実態については不明瞭な点が多く存在する.そこで本研究ではアジア途上国における交通計画策定のための一助としてLAMATの都市内分布を明らかにすべく,一般物体認識・画像判別の手法であるR-CNN(Region with CNN)の方法論を基にした車体検出ツールの構築を行い,開発したツールの精度検証及び,実務に用いる上でのロバスト性の検討を行う事で,LAMATを検出・判別する上で寄与する要因について把握した.
  • 石倉 智樹, 高山 雄貴, 赤松 隆
    2018 年 74 巻 3 号 p. 203-216
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/20
    ジャーナル フリー
     経済活動の空間的集積現象には,様々な空間スケールの下で産業立地の集積が形成されるという規則性が頑健に成立している.本研究は,各空間スケールにおける交通整備が産業集積に及ぼす影響を分析するため,二つの階層の空間構造を持ち,産業連関構造を明示的に考慮した空間経済モデルを構築した.それぞれの空間階層における交通整備を想定した数値実験を通じて,人口集積パターンの空間的特徴に関しては,既存研究の知見と概ね整合的な,交通整備によって一極集中から分散的な均衡が生じる特性が確認された.産業集積に関しては,地域間スケールにおいても地域内スケールにおいても大規模な地域・都市のみに財部門の集積が生じること,小規模な都市においてもサービス部門が維持されやすいこと,など新たな知見が見られた.
  • 溝上 章志, 尾山 賢太
    2018 年 74 巻 3 号 p. 217-227
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/20
    ジャーナル フリー
     公共交通による市民の移動を支援するために,熊本市は熊本市公共交通基本条例で「公共交通不便地域」と定義した既存鉄道駅・バス停留所から500m~1000mの地域に「ゆうゆうバス」というコミュニティバスを運行させている.しかし,運行を継続するためには30%以上の収支率を達成することを沿線住民に求めており,この運行継続基準を達成できない場合は3年後には路線を廃止するという約束が事前になされている.
     本研究では,ICFの構成概念に沿った構造方程式による外出頻度モデルと社会的相互作用を考慮した手段選択モデルを構築し,これらの両モデルを用いてコミュニティバスの需要を予測し,収支率を評価する方法を提案する.さらに,運行継続基準を達成するためのサービス水準と路線沿線の環境条件との関係を分析する.
  • 大島 大輔, 大口 敬
    2018 年 74 巻 3 号 p. 228-242
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー
     グリッドロック現象の発生には,ネットワーク上を通行する交通のうち交差点で転向してネットワークに残留する車両の構成比が関係し,この構成比はネットワークの交通状態によって遷移し得る.この遷移過程を踏まえると,最終的に到達する交通状態として,交通需要等が等方な条件下では2つの状態が導かれるのに対し,異方な条件下では3つの状態があり,そこに至るまでの過程として9パターンが起こり得ることを示した.また,特徴的な現象として,渋滞が一周つながった時点ではグリッドロック現象による交通量低下が起こらないが,構成比の遷移後に突然自発的に交通量低下が始まるケース等が起こり得ることを明らかにした.更に,交通量低下が急激に進行し,構成比の遷移前にデッドロックに陥る可能性があり,それを判断するための計算方法を導出した.
  • 瀬谷 創, 泊 将史, 力石 真
    2018 年 74 巻 3 号 p. 243-260
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,大阪府と兵庫県を対象に,大規模小売店舗の出店が既存小売店舗(衣料品・食料品)の撤退及び売上げに与えた影響を実証的に検証する.実証分析では,商業統計個票データより18年間にわたるパネルデータを構築し,DID法を用いて影響を定量的に評価する.分析の結果,既往研究と異なり,大規模小売店舗の出店が既存小売店舗の存続確率及び売上げに対して負に影響するケースが存在する可能性が示された(売上げへの負の影響は特に短期~中期).また,大規模小売店舗の出店影響は,[1]期間(短期~長期),[2]出店地点から既存店舗までの距離,[3]出店店舗の売場面積,[4]既存店舗の種類に応じて異なることが確認された.分析結果は近年のまちなかへの大規模小売店舗の出店促進施策に一定の注意を促すものである.
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