抄録
本研究は,主要な輸出財を生産する企業が外国資本に所有されている途上国を対象とした一般均衡モデルを定式化し,交通インフラの整備が途上国の産業構造に与える影響を分析する.モデルの定式化に当たっては,外国資本に所有される貿易財部門と国内資本に所有される非貿易財部門から構成される2部門開放経済を想定する.モデルの分析の結果,このような途上国において,世界市場との貿易費用を下げる交通インフラの整備は,貿易財部門を拡大すると同時に,非貿易財部門の縮小をもたらし,国内資本の企業数や経営者数を減らすことを示す.一方,国内交易の費用を下げる交通インフラの整備は,非貿易財部門の拡大をもたらすことを示す.さらに,この分析結果に基づき,途上国の長期経済発展に関わる政策的含意について考察する.