2019 年 75 巻 5 号 p. I_1103-I_1112
本研究は,法定高齢者講習の受講者を対象とした調査を通じて,不安心理が発生しないことで補償行動の対象となりづらい運転に必要とされる能力を明らかにする.
平成28年の7~9月に愛知県にあるトヨタ中央自動車学校にて高齢者講習を受講した448名に対し,教習所コースで実車両(教習車)を使用した運転指導員による運転行動評価,ドライビングシミュレータによる運転適性評価,視力,運転に対する不安等に関する意識調査を通じて,加齢により低下する運転能力の傾向と運転時の不安感の関係性を分析した.結果,特に一時停止のある交差点における二段階停止,視野の縮小は,加齢により問題が生じるようになるにもかかわらず,運転への不安にはつながらない,いわゆる「過剰な自信」を表象する要因となっていることが明らかとなった.