2019 年 75 巻 5 号 p. I_223-I_232
高度経済成長期に建設された多数の公共施設が寿命を迎えるが,社会情勢の変化から統廃合される施設も多い.一方,我が国の人口は平地部に集中しており,近年の気象変動を踏まえると洪水災害対策もまた重要であるため,公共施設が洪水避難場所の機能を持つことも考慮する必要がある.本研究では,自治体支出を抑えながら平常時の住民の利便性を最大化するように施設削減シナリオを設定するモデルと,施設 の立地・床面積に対して避難場所の確保状況を確認するモデルの2つを用いて,施設の削減方針が洪水避難場所に与える影響を分析した.施設を大きく削減して集約化すると,同様の施設数でも避難への影響が大きく異なる場合があり,適切な施設配置と床面積配分を行なえばむしろ避難条件を好転できる可能性があることを明らかにした.