抄録
本研究では,灯油難民についての実態把握を行った.その結果,灯油缶が重いために購入を控えている高齢者や,灯油の値段が高いために購入を控えている高齢者の存在が明らかとなった.このことから,灯
油購入者のうち29.0%の灯油難民が確認された.灯油難民は,入浴回数を減らしたり,暖房をつける部屋を制限するなどの状況もみられた.宅配利用者以外の灯油難民要因は,自家用車で灯油を購入できないこ
と,単身世帯,木造住宅,3階以上に居住,年収200万円未満,歩行可能距離500m未満であることが挙げられた.宅配利用者では,集合住宅の高層に住む人で灯油難民が発生する可能性が示された.灯油の宅配にあたり,エリアが限定されていることや,高層階までの宅配が行われていない場合が多いこと,高層階への宅配は割高になることの問題が示された.