抄録
スペインでは標準軌新線の開通にあわせて1992年にAVEが運行開始され,広軌の在来線改良や軌間可変列車なども併用しながら,年間約125kmの高速新線建設が続けられてきた.本研究ではこの影響を分析するため,1963年以降概ね10年ごとに2015年までの6年次について,主要都市間の各種所要時間指標を計測し,その特徴を考察した.
その結果,1985年以前は在来線改良等で改善が図られたが,1985年以降は運行頻度や乗継ぎ利便性向上にやや課題を残しながらも,乗車時間に加えて待ち時間や運行頻度を考慮した総合的な利便性の面で国内主要都市間の多くの区間で利便性が向上したことがわかった.これはフランスに関する研究結果と異なる傾向であり,年間の新線整備がスペインの方が大幅に多いことが関係していると考えられる.