2020 年 75 巻 6 号 p. I_239-I_247
近年,地方鉄道の存廃に関する議論が活発に行われ,地方鉄道の存在意義が問われていることを背景に,本研究では全国の地方鉄道を対象として,地方鉄道の存廃と駅勢圏における年齢階層別人口の社会増減との関連および廃止直前の交通分担率と廃止後の人口動向との関連について分析した.その結果,地方鉄道の存廃で比較すると,10 年以内に高校を卒業する年齢を含む若年層の社会減で長期的に有意な差があることを明らかにした.また廃止直前の鉄道および自動車分担率に着目し,分担率の大小に関わらず廃止路線と存続路線で特定の年齢階層の社会増減に差のある傾向があること,廃止路線において鉄道分担率の大小によっては社会増減にあまり違いは見られないものの,自動車分担率の大小によって社会増減に違いが見られることを明らかにした.