2020 年 75 巻 6 号 p. I_523-I_535
本研究では,交通インフラ網整備がもたらすマクロ経済への効果及び各地域の人口や経済力分布への影響を推計するため,既往研究で提案されているモデルシステム(MasRAC)を用いて,既に利用されている高速道路がもたらしてきた効果の評価を行った.その結果,今日までの我が国における高速道路整備は,国全体に対しては多大な豊かさをもたらしてきた一方で,整備によって人口や経済力の地方部から三大都市圏への集中を促し,より成長した地域と成長が阻害された地域を生み出す,すなわち国土の不均衡のあ拡大を招くものであった可能性が示唆された.これらから,地方の高速道路整備をより一層十分に行うことで,マクロ経済のさらなる底上げとともに,地方からの経済力の流出が軽減され,より豊かでバランスのとれた国土が形成され得ると考えられる.