2020 年 75 巻 6 号 p. I_583-I_589
限られた税収を効率的に投資するために,社会基盤整備では特にストック効果の高い事業への重点化が求められている.本研究では特に道路整備によるストック効果に着目する.ストック効果の発現メカニズムについては,これまで経済理論に基づくモデル構造が仮定されることが多かったが,仮定した構造が実際の地域データにおいて成立するか否かに関する検証が行われることは,ほとんどなかった.本研究では,分析に統計的因果探索を用いて,個別地域・主体での社会基盤の整備と経済成長の因果関係を明らかにすることを目的とする.分析対象地域は,平成 27 年 3 月に全線開通した尾道松江線として,経済成長とアクセス性向上の因果関係の同定を試みる.