2020 年 76 巻 2 号 p. 91-99
Iceberg型輸送費用モデルは,財の輸送抵抗を表現するモデルとして,経済学における理論分析や空間応用一般均衡(SCGE)分析において広く採用されている.ただしIceberg型輸送費用モデルは,輸送対象の財とその財の輸送サービスが同じ技術で生産されると仮定するため,この2つの生産活動は同一アクティビティとなる.多部門SCGEモデルではアクティビティ・ベースで部門分類を行うが,Iceberg型輸送費用モデルを採用した場合には,輸送対象の財とその財の輸送サービスを同一部門が生産する.ただしこの2つの生産活動の水準は区別できない.これは輸送抵抗の変化が輸送対象の財の生産量に与える影響を定量評価できないことを意味する.本稿はIceberg型輸送費用モデルを採用した多部門SCGEモデルの問題を定性的および定量的に明らかにする.