2021 年 76 巻 5 号 p. I_241-I_248
社会的選択のために各個人は,私的選好に基づく自己利益の追求ではなく「社会としてどうあるべきか」という視点に立つ公共的判断を行うことが望ましい.しかし,公共的判断がどのように形成されるかについては不明な点が多い.そこで本研究では,地域公共交通の文脈において,公共的判断の形成要因をSP調査を通して実験的に明らかにし,公共的判断を促すための実証知見を得ることを目的とする.具体的には,仮想状況下での社会的選択に対する各個人の意見を取得し,潜在クラスロジットモデルの推定を通して,私的関心・公共的判断を重視するグループの特定化を試みた.また,他者へのシンパシーやコミットメントの程度が高い回答者は公共的判断を行いやすいこと,他者についてのナラティブな情報提供が公共的判断を誘発する可能性があることを示した.