2022 年 77 巻 5 号 p. I_431-I_447
本研究では,津波リスクの低減と平常時の生活利便性を同時に考える最適居住地域配置モデルを提案し,両者を両立させる居住地域配置とトレードオフ構造を論じる.本モデルでは,津波リスクとインフラ維持費,交通時間の各費用を単独で考えたときに達成可能な最小値を低減ポテンシャルとし,それらの達成度が最適となるように土地の開発有無,人口,トリップ生成量を計画する.本モデルを高知県黒潮町に適用した結果,低減ポテンシャルの達成度を高めるためには居住地を集約する必要があることが示された.また,各目的の重要度に関する感度分析の結果,津波リスクを重視するとその他の費用が増えるというトレ ードオフが見られた.一方で,インフラ維持費と交通時間との間にはトレードオフは見られず,合意形成における譲歩可能な範囲も明らかになった.