2022 年 78 巻 3 号 p. 150-165
本研究では,規模の経済性などによって複数解が存在し得る都市・交通均衡モデルに対し,観測される立地パターンや交通量などからモデルのパラメータを推定するための手法を開発する.連続時間・連続状態の枠組下で,ポテンシャル・ゲームとなる一般的な都市・交通モデルに対し,系の動学がLangevin拡散過程に従うとき,その定常分布がBoltzmann型の解析解を持つことが知られている.このことを活用し,本研究では,観測された系の状態に対するパラメータの尤度を定義し,その最大化問題としてパラメータ推定問題を定式化する.次に,この問題に対して,機械学習分野で広く利用される加速射影勾配法を用いた数値解法を開発する.最後に,提案手法を複数解が存在する均衡モデルに適用し,パラメータを適切に推定できることを明らかにする.