2022 年 78 巻 6 号 p. II_202-II_211
これまでの新幹線整備を巡る議論では費用便益分析に代表されるような,効率的な連結という観点が中心となっており,有機的な連結という観点が差し置かれてきた.そこで本研究では,新幹線鉄道および高速道路の高速交通網の提示の有無が,人々が抱く当該地域に対する有機的連帯意識に対してどのような影響を及ぼすのか,ランダム化比較実験により実証的に明らかにした.一都三県の1500人を対象としたWeb調査により,被験者を3群に分け,それぞれの群に白地図,高速道路網図,新幹線鉄道網図の提示した後に意識調査を行い,高速交通網の提示の有無の影響を検証した.その結果,高速道路網を提示された群における新幹線の通過地域と非通過地域との間の有機的連帯意識の差は,白地図や新幹線網を提示された群に比べて,有意に小さくなることが示された.