2022 年 78 巻 6 号 p. II_400-II_408
近年,我が国では異常気象や災害の発生数が増加傾向にある.2018年には,「平成30年7月豪雨」が西日本を襲い,交通網が麻痺した.それにより,通勤や物流等の企業活動の動きが途絶え,相当額の経済被害が発生したと考えられる. その対策として,「災害時BRT」に代表される様々な交通需要・供給マネジメント策が講じられた.一方で,予算や制度面での問題から,交通網の復旧途上で中止の議論もあったのも事実である.こうした課題認識から,本研究では,交通に甚大な影響を及ぼす災害発生後のマネジメントの議論に資するため,「平成30年7月豪雨」に講じられた交通マネジメント施策によって抑制された交通途絶の経済被害抑制効果について,道路事業の便益分析に用いられる手法を参考にしつつ推計する.結果として,豪雨災害発災後,JR呉線の運行再開までの約2ヶ月の間,推計の対象とした経済被害減少便益だけでも約50億円程度となることが推計された.