2022 年 78 巻 6 号 p. II_509-II_521
国交省は河道改修主体の従来の治水から氾濫域における社会の組織的対応を含む「流域治水」に舵を切りつつある.しかし具体的内容には未定の部分も多く,特に河道対策と氾濫域対策の連携についてはほとんど触れられていない.一方,江戸時代には河川と氾濫原を一体とした治水が広く実施されており,今後の流域治水の参考になる可能性がある.しかし当時の治水事業の多くは文書や絵図のみで記載されているため,治水効果等の定量的把握は十分なされていない.そこで本研究では,複数の氾濫数値シミュレーションの結果に基づき,江戸時代の土木技術者が見ていた河川工学的風景を可視化し,当時の事業の具体的効果とその裏にある治水思想を考察して,流域治水の今後の発展に有用と思われる事項をとりまとめた.