2023 年 79 巻 17 号 論文ID: 23-17010
指宿港海岸では,海岸構造物に養浜を組み合わせた面的防護工法による整備が進められている.整備にあたり,地域の重要な観光資源である「天然砂むし温泉」を含む温泉地下水環境の保全が重要な課題となっている.指宿の天然砂むしは,温泉地下水で高温となった砂層内で身体を暖めるという世界でも例がない独特の温浴法であるが,その実施条件は十分明らかになっていない.本研究では,天然砂むし温泉の実施条件を明確にすることを目的とし,2018年から継続してきた温泉地下水の観測結果を整理した.天然砂むし温泉は,地盤高はT.P.+0.7m~+1.4m,表層温度(砂面下0.2mの温度)は65℃~80℃,砂浜表面から地下水位までの距離は0.3m~0.6mの範囲で実施されることを明らかにし,表層温度は砂浜表面から地下水位までの距離に応じて線形的に低下するという関係性を見出した.