2023 年 79 巻 17 号 論文ID: 23-17034
2011年以降,日本列島太平洋沖にはDONETやS-netなどの稠密な沖合海底観測網が敷設され,現在ではリアルタイムで沖合に設置された地震計や水圧計による観測が実現している.この沖合観測データを利用した津波予測技術について研究開発は進められているが,リアルタイム観測網と津波干渉法を結びつけた検討は皆無であった.本研究では,DONET海域から和歌山県沿岸において,沖合観測網と津波干渉法を利用したリアルタイム津波予測の可能性について検討を行った.津波干渉法によるグリーン関数を用いて構築した合成波形は,長周期成分の位相はおおむね一致する結果が得られた一方で,湾内で励起される副振動成分の再現は困難であることがわかった.他のイベント波形を利用したさらなる検証は必要であるが,1年間の連続観測データを用いた波動干渉法によるグリーン関数と沖合観測データにより,津波予測に資する合成波形構築の可能性を示すことができた.