2023 年 79 巻 17 号 論文ID: 23-17106
気候変動に伴う平均海面上昇や台風の強大化が危惧されるなか,港湾施設における浸水リスクの評価や対策への関心が高まっている.このうち,波当たりの比較的強い岸壁などでは越波に対して適切に備える必要がある.本研究では,太平洋に面した港湾の岸壁をモデルケースとして護岸越波流量算定図の近似式と換算天端高係数を援用し,越波による浸水状況を把握し胸壁による浸水対策を検討する簡易手法を提示するとともに,その妥当性を断面模型実験結果とブシネスクモデルによる越波計算結果により確認した.
簡易手法は,モデル岸壁に対する波の入射角が大きい場合に越波計算による越波流量及び浸水深を過大評価するものの,許容越波流量を満足する必要天端高に加え,岸壁法線または背後に設置した胸壁による越波流量の低減効果を定量把握することができる.