2023 年 79 巻 17 号 論文ID: 23-17136
瀬戸内海全域における広域的なアマモ(Zostera marina)生息域の保全に向けて,高解像度海洋流動モデルと浮遊アマモシュート(種子)輸送モデルを用いた長期数値再解析を行った.Lagrange確率密度関数解析を行い,アマモの繁茂状況を考慮したアマモ場間コネクティビティを定量的に評価するとともに,マルコフ連鎖を用いた多世代間コネクティビティ評価モデルを構築し,瀬戸内海の多年生アマモの9年間(9世代)にわたる広域交流特性を解析した.単年(1世代)では湾・灘の内部でのself recruitmentが卓越するものの,世代をまたぐことでアマモシュートは海峡を通過し,遠方へと生息範囲を拡大することを示した.また,来島海峡はシュート輸送に対してpivotのように作用し,瀬戸内海のアマモ生息域を東西に2分することなどを明らかにした.