2023 年 79 巻 17 号 論文ID: 23-17137
近年,世界的に深刻化するサンゴの白化問題は本邦南西諸島でも顕在化しており,2016年には沖縄本島を含む琉球諸島の多くで大規模白化現象が生じた.これに対して,水温が比較的安定で低温な水深30m〜150mのmesophotic zone(MPZ)のサンゴ生態系は,水温変化が大きく白化が顕著な浅海域のサンゴ遺伝子型の避難域として期待されている.しかしながら,浅海域−MPZ間の生態系リンク構造は十分に解明されていない.そこで本研究では,沖縄本島沿岸のサンゴ礁を対象に多段ネスト高解像度海洋モデルとサンゴ幼生を模したオフラインLagrange粒子追跡モデルを用いた数値解析を行い,浅海域−MPZ間のコネクティビティ評価,幼生放卵期における混合層の鉛直効果と3次元輸送との関係の解明,MPZサンゴ生態系が確認されている沖縄本島西海岸の瀬底島海域におけるサンゴ幼生加入および幼生供給過程の把握を試みた.