2023 年 79 巻 17 号 論文ID: 23-17138
貧酸素水塊の挙動解析には数値モデルを用いた流動・水質計算が有効であるが,波浪が引き起こす鉛直混合を陽的に計算する流動-水質-波浪カップリングモデルが用いられた例はほとんどない.本研究では,大阪湾奥部に位置する神戸港波浪観測塔を対象に,観測結果の分析と流動-水質-波浪カップリングモデルを用いた数値計算を実施し,波浪が溶存酸素(DO)濃度に及ぼす影響を調べた.観測結果の分析からDO濃度の変動特性を把握し,波浪とDO濃度の変動の関連を見出した.数値計算においては,砕波境界層を考慮し,乱流長さスケールの海面境界条件を有義波高から与えることで,DO濃度の再現精度が向上した.また,表層から下層への熱およびDO輸送量が増加したことから,波浪は鉛直混合を強めることで貧酸素化の低減に寄与している可能性が示唆された.